ぼくは、ダックスフンドのマーくん
ママとお散歩に行くのが大好き
でもね、ぼくのうしろのあしね、一本骨がないんだ
見た目はね、あしは四本
でも生まれたときから、ぼくのうしろのあしは一本、ブーラブラ
ぼくがママと出会ったのは、もう4年くらい前になるかな
ぼくは可燃ごみの袋の中にいたんだって
ママとママのお友達が可燃ごみを集める場所の前を通りかかったとき、かすかに「くぅ〜ん」と鳴く声を聞いた
もちろん、ぼくは鳴いたことなど覚えてないよ
「何か聞こえたよね?」
ママとママのお友達はたくさんの可燃ごみの袋の中からぼくを見つけてくれたの
それがママとぼくとの出会いさ
外からは見えないように新聞紙で隠すように包まれていたぼく
目はまだ閉じたまま、へその緒もついたまま
ママはぼくを病院に連れて行ったの
「う〜ん、体温が下がっているから育つか分からないよ」と先生は悲しそうに言った
「それに…」
「なんですか?」ママは先生をのぞきこむ
「この子のうしろあしの一本は骨がないんだよ。たぶん、ブリーダーが近親交配かなにかで赤ちゃんを生ませて、欠陥があって売れないこの子をすてたんだろうね。悲しいけどこのごろ多いんだよ」
ママはそんなぼくを、ママの家にむかえてくれたんだ
ママの戦争はその日からはじまった
3〜4時間おきのミルク
おしっことうんこの世話
ぼくはまだひとりでおしっことうんこができなかったから、ガーゼでこちょこちょっといつも刺激してくれたんだよ
消えかかっていたぼくの命…
目をはなすと死んでしまうかもしれない、そう思ったママはぼくが元気になるまであまり眠れなかったんだって
いまはママのおかげでぼくは大好きなお散歩もできるし、大好きなお肉も食べられるんだ
お医者さんから「もう大丈夫」と太鼓判を押されたぼくはもう毎日がたのしくってたのしくって
ちょっと歩きにくいけど、そんなのおかまいなしさ
ある日、2階のママのお部屋であそんでいたら下からプ〜ンといいにおい
きょうのおかずはなにかなぁ
いつもはママがだっこして下のお部屋までつれていってくれる
え〜い、きょうはじぶんでかいだんを降りちゃおう
ママをびっくりさせるんだ
え〜と、まえあしを1歩だして
あれ??
ぎゃん、ぎゃん、にゃん、にゃん、わんぅう
い、いたいよぉ
バランスをくずしてかいだんをごろんごろんとおちちゃった
「マーくん、だいじょうぶ?」
気がついたらママがぼくをだっこして心配そうに見てる
ぼくははじめて三本あしの不便さを知った
もうこんなに痛いかいだんはこりごり
それいらい、ぼくはかいだんがこわくてこわくて近づかなくなったんだ
かいだんの痛いできごとで三本あしの不便さを知ったぼくだけど、ママがいつもそばにいてくれるからぼくはとってもしあわせなんだ
お散歩とお肉、そしてママといっしょのお昼ねがさいこう
その日もぼくはママといっしょにお昼ねをしてたんだ
するときゅうにママがあわてて下のお部屋にいってしまった
くぅ〜ん、くぅ〜ん、ママ〜?
なにか話し声が聞こえる
ママと、となりにすんでいるタッくんのおばあちゃんの声だ
タッくんはぼくと同じダックスフンドのお友達なんだ
大きなバタンという戸の音が聞こえてママは外に出ていった
いつもとなにかちがう
ぼくは2階のお部屋をウロウロ歩き回るしかなかった
しばらくすると外からパチパチッ、パチパチッと小さな音が聞こえる
はじめて聞く音
なんだろう?
それに変なにおい
パチパチッの音も大きくなってきた
目の前がだんだん見えなくなってきたし、目が痛い
こわい、こわい、ママ、ママーー
ぼく、また暗いところにひとりぼっちなの?
また捨てられたの?
とおいきおくの向こうに感じたかなしみが胸いっぱいにひろがった
生まれたばかりで覚えてもいないはずなのに
わぉおおおーーん、ママーー
… ![]()
プロフィール



